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書評/附帯税の実務研究(品川 芳宣 著)

2025年02月24日 税のしるべ 無料公開コンテンツ

 税務調査が終了し、修正申告書も出し終えて「ヤレヤレ」と思った頃にやってくるのが加算税・延滞税の賦課通知である。

 附帯税と称されるこれらの税は、国税だけでなく地方税においても課されることとなっている。これらの税のうち、各種の加算税については、「税」という名は付されているが、実質的には一種のペナルティーと解されている。現に米国では、これらの税のうち、いわゆる加算税部分はペナルティーとして位置づけられている(内国歳入法第6662条、6664条、6694条、7201条ほか)。

 また、延滞税については、期限内に納付をした者とのバランスを維持し、早期納付を促進する目的で、利子税については期限内に納付した者とのバランスを保つ目的で設けられている制度であると考えられている。このように、附帯税は税務行政上、きわめて重要な機能を果たしているにもかかわらず、この分野に関する研究はほとんど行われてこなかった。

 この分野に初めて切り込んだのは、品川先生による「附帯税の事例研究」(財経詳報社・平成元年)であった。同書は、実務家のみならず、研究者や学生にバイブルとして扱われてきた。現に筆者も同書には度々お世話になった。

 近年、税務コンプライアンス向上の見地から附帯税分野においても数々の改正がなされている。このような状況下で、前掲書を基本としつつ、それらに判例や改正事項等を盛り込んだ上で発刊されたのが本書である。

 本書は全8章の構成となっている。

 第一章は「附帯税と本税の関係」というタイトルが付されている導入部分である。

 第二章「延滞税」では、賦課の原因となる課税要件に触れつつ、実務上生じている問題点について豊富な裁判例を踏まえた解説がなされている。

 第三章の「利子税」では延滞税との共通点および相違点等を踏まえつつ解説がなされている。

 第四章以下では、各種の加算税につき、それぞれの加算税の特色およびそれらを踏まえた上での共通事項等について言及がなされている。

 第四章の「過少申告加算税」は、通常の申告がなされ、その内容に誤りがあった場合に課されるこの税について、最近における加算税制度等についても触れつつ、実務上問題となることの多い「正当な理由」、「更正の予知」等について、裁判例だけでなく裁決例についても触れるなど、詳細な解説がなされている。

 第五章では申告がなかった場合等に課される「無申告加算税」についても、近年行われている加重制度の追加について紹介しつつ、実務上重要な「正当な理由」についても紹介がなされている。

 第六章の「不納付加算税」では、この税は納税者本人ではなく源泉徴収義務者に課されるという点で、実際の負担者が誰になるかなど、他の加算税と若干異なるところも判例を交えつつ分かりやすい形で解説がなされている。

 第七章の「重加算税」は、第四章から第六章でみてきた各種加算税が課される場合において、隠蔽又は仮装行為があった場合に課される税であり、ここでも近年における加重制度の導入等についても触れつつ、どのような行為が隠蔽又は仮装に当たるかについて、豊富な裁判例を踏まえた解説がなされている。

 第八章の「加算税共通」では各種の加算税の関係および賦課決定の理由附記についての記述がされるとともに、近年導入された「国外財産調書制度」および「財産債務調書制度」に係る加算税制度についても解説がなされている。

 このように、本書は従来、正面から扱われることの少なかった附帯税について正面から取り組み、広範かつ深い考察がなされている。

 税の専門家、研究者、実務家、学生等の皆さんに、是非、手もとに置くようおすすめしたい良書である。 

 税理士法人川田事務所 代表社員税理士・川田 剛

孔栄社

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