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書評/重要租税判決の実務研究・品川芳宣著

2014年05月12日 税のしるべ 無料公開コンテンツ

評者・川田剛(大原大学院大学客員教授・税理士)

 税の分野の仕事が長くなればなるほど実感させられるのが、この分野が会計学と法律学の学際にあるという点である。
 然るに、わが国では、税実務の中心が法人税であることなどもあって、どちらかといえば会計学の延長線上にあると考える人が多かった。この傾向は、税法を学びたての若い人たちに特に顕著である。
 しかし、仕訳や申告書の作成等の分野においてはソフトの活用により、基本的知識さえあれば初心者でもほぼ正しい申告ができるようになった。そうなってくると残された分野は、税法の趣旨を理解しそこに書かれている条文をどのように解釈するかという仕事になってくる。
 当局による税法の解釈は、法令解釈通達という形で国税庁から公開されている。そのため、大部分のケースにおいてはそれに従っていれば実務上問題となることはない。
 しかし、場合によっては通達で手当てがなされていなかったり、通達で示された解釈と別の解釈をした方がより実情を反映することができるというような事態も生じてくる。このような場合、最終的には訴訟となり、裁判で決着が図られることとなる。その意味で、租税判決が実務に及ぼす影響は極めて大きい。
 このようなことから、例えば、米国や英国などでは、判例の積み重ねが法的拘束力を有する体系(いわゆるコモンロー)となっているくらいである。わが国はそこまでは至っていないが、それでも租税判決が実務に及ぼす影響は年々大きくなってきている。
 本書の初版が世に出たのは平成11年(1999年)のことであるが、著者である品川芳宣教授は、長い間税務の現場で税務訴訟関係の仕事をしてこられた。換言すれば、国税庁における税務訴訟の生き字引的存在であった。
 初版以来一貫して貫かれている本書の特色は、このような著者の経験を踏まえ実務面に役立つことを主眼としているという点である。周知のように、租税判決の中には、理論的には極めて高度で、かつ論争になるものも存在するが、本書で取り上げられているのは、そのようなものよりも、実務に役立つ判決である。
 近年、納税者の権利意識の高まりにより専門家責任が問われるケースが多くなっている状況等を勘案した場合、税理士など税務の専門家にとって租税判決の重要性は今後ますます高まってくるものと思われる。同様に、税の実務に従事しておられる会社の税務担当者、さらには税務の専門家を志しておられる方々にとっても租税判決に関する知識は不可欠なものとなっている。
 今回、新しい判決等も加えられ、さらに充実した内容となった本書の発刊は、まさに時宜を得たものであり、是非一読をお勧めしたい。

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