書評/租税回避と濫用法理ー租税回避の基礎的研究ー ・ 今村隆著
2015年05月11日 税のしるべ 無料公開コンテンツ
評者・川田剛(大原大学院大学客員教授・税理士)
最近話題となっている「税源浸食と利益移転(いわゆるBEPS)」の議論にもみられるように、多国籍企業や富裕層による租税回避に対する関心が高まってきている。
租税回避行為の横行は、単なる税収減に止まらず、税制及び税務行政に対する国民の信頼低下に直結するものである。
然るに、わが国においては、脱税等に比し、どちらかといえばあまり注目されていなかった。
このような状況下において、今般、日本大学大学院法務研究科の今村隆教授による「租税回避と濫用法理―租税回避の基礎的研究―」(大蔵財務協会刊)と題する著書が発刊された。
著者である今村教授は、かつて法務省の租税訟務課長を務められ、税務訴訟において国側を代表して直接担当してこられた方である。そのため、本書では理論面のみならず、実務経験を十分踏まえた内容のものとなっている。
本書は、「第1編 租税回避の基礎理論」「第2編 濫用法理」「第3編 租税条約の濫用」「第4編 比較法研究」の4編構成となっている。
第1編では、第1章で租税回避の意義と問題点について述べた後、次いで第2章では、実務上もっとも悩ましい問題である"租税回避とは何か"について、海外の判例等を引用しつつ法形式濫用、経済実質基準、人為的操作などを検討したうえで定義づけがなされている。
「第2編 濫用法理」では、わが国の代表的な判例を欧州裁判所のそれと比較したうえで究明がなされている。
「第3編 租税条約の濫用」では、BEPSでの議論等も踏まえつつ、租税条約における受益者概念及び特典享受制限条項(特にLOB)について問題点の指摘がなされている。
「第4編 比較法研究」では、一般的包括否認規定(いわゆるGAAR)について、カナダ、オーストラリアの事例等について検討がなされている。
主要国では、租税回避への対抗策として一般的否認規定を設けることが通例となっている。このような動きを踏まえ、今後わが国でもこれらの規定の導入についての議論が高まってくるものと思われる。その点でも本書は注目に値する。ぜひ一読をお薦めしたい。
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