書評/詳解 財産・資産評価の実務研究(野村資産承継研究所 監修 / 品川 芳宣 著)
2023年01月16日 税のしるべ 無料公開コンテンツ
評者・川田剛(税理士法人川田事務所 代表社員 税理士)
本書は、資産評価の最高権威として知られる品川芳宣筑波大学名誉教授の集大成ともいえる著書である。
「税のしるべ」連載の「傍流の正論」にも記されているように、同教授はバブル最盛期の昭和63年~平成3年に国税庁で資産評価企画官として、バブル期の地価高騰を利用した租税回避に取り組んでこられた方である。
本書は、そのような著者の経歴が随所に生かされている。
本書は、全5章と補論で構成されているが、実務研究という表題からも明らかなように、理論面よりも実務面にウエイトを置いた内容となっている。
ちなみに、第1章では税法における財産等の評価規定として、各税法における規定を引用するとともに、そこで規定されている「時価」及びそのベースとなる「価額」、「適正な時価」の本質について、問題提起がなされている。
次いで第2章では、税務通達による評価の論点について、実務上問題となることの多い租税法律主義との関係、税務通達の法的性格、法的拘束力及び税法間の差異と調整に触れつつ、税務通達に反する課税処分の効力についても解釈がなされている。
第3章では、実務上特に問題になることの多い土地等の評価について、第4章で株式・出資の評価を中心に、その他の財産については第5章でそれぞれ事例や判例等を交えた丁寧な解説がなされている。
そのうち、特に、土地等については、不動産鑑定評価基準等を始めとする他の評価制度との関係からスタートし、相続税法上の財産評価のベースとして広く用いられている路線価方式を中心に、所得税法や法人税法、さらには地方税法(固定資産税)との関係についても問題点等に言及しつつ、詳細かつ分かりやすい解説がなされている。
また、第4章の株式・出資の解説では、実務上特に問題となることの多い非上場株式の株式評価について、豊富な実務経験に裏打ちされた分かりやすい説明がなされている。
第5章のその他の財産については、貸付金等を中心に実務面で想定される事例から解説がなされている。
また、補論では令和4年の最高裁判決に触れつつ、実務上問題となることの多い総則6項適用を巡る争いについても解説がなされている。
このように、本書は著者の豊富な経験を踏まえた分かりやすい解説がなされており、税理士等の実務家に、是非一読をおすすめしたい良書である。
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