書評/法人税における資本金等の額・秋山忠人ほか著
2012年10月22日 税のしるべ 無料公開コンテンツ
評者・川田剛(明治大学大学院グローバルビジネス研究科教授)
法人税法を学ぶ人たちにとって、資本金等の取扱いは最も頭の痛い問題の一つとなっている。それは、法人税の課税標準たる所得の金額の計算を資本等取引を除いたところで計算することとされているにも拘らず、資本等取引の範囲、なかでも資本等の金額の範囲が必ずしも明確になっていなかったためである。
この点については、平成18年度の法人税法改正において、資本の部に関する規定の大幅な整備が行われ、この部分が「資本金等の額」として定義され、それは、「法人が株主等から受けた金額」を言うとして法文上明確にされた。
また、その具体的な内容についても、法人税法施行令(第8条)で定められるなど明確化が図られた。
しかし、実際には、例えば組織再編等に伴い、資本等取引と損益取引が混合した取引等が多数出現したことなどもあって、この分野はやはり難しいというのが専門家の間の定説となっている。
それは、企業会計における利益の計算方法と法人税法における所得の計算方法が、その基本目的の差等もあって異なる部分が多く含まれているためである。
本書は、国税庁及び国税局で長い間法人税の審理事務に従事し、現在税理士として活躍中の人たちが、過去の経験や税理士として直面した種々の問題について、企業会計と法人税の調整という視点からまとめられたものである。
ちなみに、法人税法施行令8条1項では、資本金等の額は、下の算式によって計算されるとしている。
本書では、下記算式のうち(B)の資本金等の増加部分及び(C)の減少部分について、具体例を用いて解説がなされている。
例えば、実務上問題となることの多い債権の現物出資(いわゆるデット・エクイティ・スワップ)については、債権者、債務者双方の会計上及び税務上の処理方法等について具体例に基づいた解説がなされている。
同様に、新株予約権の付与、行使や合併等に伴う処理についても、会計及び税務それぞれについて具体例に基づいた詳細な解説がなされている。
このように、本書は単なる条文の解説にとどまらず、具体的事例に基づき会計処理や税務処理が分かりやすい形で説明されている。
執筆者の多くは著書等を通じ読者の皆さんにもなじみの深い方であると思われる。従来、多数の著者によるこのような形での著作物の発刊事例はあまりなかったが、ますます複雑化しつつある今日の税法を考えると、今後このような形での発刊が増加してくるのではないかと思われる。
資本金等の額という限られた分野ではあるが深い知識を有する各著者による解説は実務にも大いに役立つものと期待される。
是非一読をお勧めしたい良書である。
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