税務担当者と実務家のための 相続税・贈与税 体系 財産評価/渡邉定義、村上晴彦、小坂明正 共著
2021年12月13日 税のしるべ 無料公開コンテンツ
評者・川田剛(大原大学院大学客員教授・税理士)
相続税・贈与税において最も重要となってくるのが財産の把握とその評価である。
かつては無記名や仮名、借名等による預金口座が存在し、担当官はその把握が重要な仕事となっていた。
しかし、近年では、それらの預金等はほとんど消滅し、真の所有者の割出しが困難だった割引債等についても、ほぼ消滅に近い状況となっている。
その結果、相続税・贈与税の分野において、実務家にとって残されている最大の問題点が財産の評価であるという点については、異論のないところであろう。
ちなみに、相続税法では、①地上権及び永小作権の評価(法23条)、②配偶者居住権等の評価(23条の2)、③定期金に関する権利の評価(24条)、④給付事由の発生していない権利の評価(25条)、(5)立木の評価(26条)などについて、個別に評価に関する規定が設けられている。
しかし、それ以外の資産の評価については、国税庁から出されている、「相続税財産評価に関する基本通達」(直資56、直審(資)17例規昭和39年4月25日付、以後ひんぱんに改正)により実務がなされている。
ただ、財産評価の問題は、相続という一生に一度あるかないかという突発的事項に係るものであり、かつ、専門的、技術的側面が多いことから、一般の人たちにとってなじみ難いというイメージがあることも事実である。
本書は、長い間、資産税の分野で実務に従事してこられた3人の方の共著であるが、イメージ図や計算式を多用することなどにより、難解な評価の問題が分かりやすい形で説明されている。
本書の構成は、「第1章総説」、「第2章相続税法で定められている財産の評価方法」、「第3章財産評価基本通達で定められている財産の評価方法」、「第4章災害と評価」、「第5章参考資料編」となっている。なかでも、実務家にとって最も難しい問題である①「土地及び土地の上に存する権利の評価」、②「株式及び出資の評価」(特に、非上場株式の評価)について詳細な説明がなされている。
また、近年注目を集めている、いわゆる6項の規定についても、その趣旨等について、判例を引用しつつ丁寧な説明がなされている。
本書は税務担当者と実務家を念頭において書かれたものではあるが、研究者の方々、さらには、これから税の分野に進もうと考えておられる学生諸君にも是非一読をおすすめしたい良書である。
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