評者・川田剛(大原大学院大学客員教授・税理士)

 国際税務に従事している人ならだれにでも思い当たる難問がある。そのうちの一つが国際取引に係る源泉徴収問題である。
 源泉徴収は、国内取引でも問題になるが、国際取引においては納税者が非居住者や外国法人などであり、しかもそれらの多くはわが国に恒久的施設を有していない場合がほとんどである。
 その結果、源泉徴収漏れが生じた場合、ほとんどのケースにおいて、最終的な源泉徴収義務者の負担になってしまう。しかも、国際取引に習熟している非居住者や外国法人は、税引手取契約の形で求めてくるのが通例である。
 現に、評者が出会ったいくつかのケースでもこのような契約が存在していたため、源泉徴収にかかる負担が発生したことがあった。
 しかし、源泉徴収、なかでも国際源泉に関する専門家の数はそれほど多くない。本書の著者、冨永賢一さんは、この分野の数少ない専門家の一人である。
 著者は、長年にわたり国税庁で源泉及び国際源泉の専門家として数多くの通達立案及び事務処理に当たってこられた。本書は、それらの経験の集大成ともいえるものである。
 本書は、第1編総則、第2編所得種類別取扱い、第3編参考法令等の3編で構成されている。本書の中核部分を占めるのは実務上問題となることの多い第2編であるが、第1編ではその前段階として、外国法人又は非居住者に対する現行制度の概要についてわかり易く説明がなされている。続いて第2編では、実務において発生する可能性の高い給与等人的役務の報酬、人的役務の提供の対価、使用料等の順でQAの形で説明されている。それらのうちの中には、筆者自身が国税庁で実際に取り扱ったケースも数多く含まれている。
 また、QAでは、国内法の根拠法令のみならず租税条約等についても言及されているので後日のチェックが容易である。しかも、第3編に支払調書や租税条約に係る免除申請書や還付請求書等も添付されているので、本書一冊で国際源泉に関するすべての問題が解決できるような工夫がなされている。
 全体で700頁を超える若干分厚い冊子になっているが、国際課税に従事する人及びこれから国際課税をやってみたい人たちにお薦めしたい好著である。

平成26年4月14日号

平成26年4月14日号