書評/地方税Q&A(令和6年版)・全国女性税理士連盟 編
2024年11月18日 税のしるべ 無料公開コンテンツ
税理士にとって、地方税は必要不可欠なものであるにもかかわらず、法人税や所得税などに比し、どちらかと言えば等閑視されてきたきらいがあった。
それは税目が多岐にわたっているだけでなく、なかには国税と課税標準を同じくしているものがあるなどのことによるものと思われる。しかし、例えば、固定資産税などは独自の課税標準を用いており、かつ、税収的にみても相続税(国税/3・2兆円)の3倍近い税収(9・8兆円)を得ている税目もある(平成6年度税収見積もりによる)。
先般の総選挙でも、各党がこぞって地方経済の活性化を訴えていたが、その場合にも、まず必要となってくるのはその財源をどのような形で調達するかという問題である。このようなことから、税理士にとって地方税の重要性は今後ますます高まってくるものと思われる。
平成19年に発刊された本書は、数少ない地方税全体をカバーした実務書として、多くの税務専門家に重宝されてきた。
ちなみに、本書は日本税理士会連合会の推薦図書として指定も受けている。
今回は、約3年ぶりの改訂(通算では5回目)となるが、改訂に当たっては、次のようなコンセプトに沿って記載の強化が図られている(編集委員長の三上広美先生による)。
(1)制度の内容だけでなく、制度の考え方に則した解説とする。
(2)地方税の実務に携わる方のために、計算例、記載例、チェックシートを入れる。
(3)近年の改正事項について解説するだけでなく、今後の税制の動向から重要性が増すと思われる制度について解説を増やす。
(4)震災や毎年のように発生する激甚災害、令和6年能登半島地震への地方税法の対応について丁寧に解説する。
また、今回の改訂に当たっては、地方税の研究者としても知られる関西大学の林宏昭教授が監修者として参加され、内容等もより充実したものとなっている。
このような新しいコンセプトの下に改訂された本書は、税理士や税理士事務所職員、企業の経理担当者等の日常業務に役立つだけでなく、税理士試験で地方税を選択しておられる方々、さらには今後、税務の分野に興味を持たれていく学生の皆さんにも、ぜひ一読をお勧めしたい良書である。
なお、若干私事にわたって恐縮であるが、三上先生は、仙台勤務時代からご主人ともども、評者が親しくお付き合いいただいている方である。
税理士法人川田事務所 代表社員税理士・川田 剛
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