タックス・アムネスティ~租税特赦
山吹 涼
国税局特別国税調査官(通称、「特官」)率いる精鋭部隊が、グローバルに事業を展開する商社を相手に税務調査を実施し、国際的租税回避を突き止めていく連載小説です。(この連載はフィクションです。実在の会社・人物等とは一切関係ありません)
令和3年(2021年) 48件の記事
令和3年12月27日号(7面)
■ 12月27日東京・WJA事務所 窓からは東京湾が一望できる。仁野が代表を務めるWJAの応接室のソファに、東京国税局調…
令和3年12月20日号(7面)
アダムスは、まるで針の筵に座し暮らしている思いであった。 WJAが3度にわたり百条文書を報じ、その数はもはや430に上っ…
令和3年12月13日号(7面)
「JUNでは、最初から、2人体制だったのかい」仁野が尋ねた。 「最初の年は、日本人とインド人の2人。しばらくしてインド人…
令和3年12月6日号(11面)
仁野は、これから行くJUNが実態のない会社だと、偶然乗ったタクシー運転手から聞き、ある考えが浮んだ。 「クマール、もし可…
令和3年11月29日号(7面)
インドのデリーはむっとする暑さだ。その上、街全体にすい匂いがする。 仁野は、キャロルが入手した情報を初めて見たとき心に引…
令和3年11月22日号(7面)
「スカイカフェは、トムが漏洩したファイルの中になかったはずだが」アダムスが問うた。 「ええ」総務課長と広報課長が声をそろ…
令和3年11月15日号(7面)
■ 当局の記者発表から2日後 執務中のアダムスの部屋のドアが大きな音でノックされると、大変なことになりました、とウィレム…
令和3年11月8日号(7面)
「秘匿性の高いスイスの銀行だからめったなことはないと思うのですが、何かあった時には、そう承知しておいて欲しいのですよ」“…
令和3年11月1日号(7面)
記者会見を終え自室に戻ったアダムスは、会見模様を忌々しく反芻した。怒りを静めようとシガーケースを机の引き出しから取り出す…
令和3年10月18日号(7面)
記者会見は、アダムスがひと通りの説明を終えると、質疑となった。 「本日は多数の方々がお越しですので、質問は各社代表1名か…
令和3年10月11日号(7面)
■ 記者発表 仁野とキャロルは、ルクセンブルク国家歳入庁内の大会議室にいた。間もなく始まるウイリアムスによる公文書偽造疑…
令和3年10月4日号(7面)
渋い顔をしているスカイカフェの幹部2人を前にして、仁野は言った。 「ですから我々が報道する前に、あなた方は密約があったこ…
令和3年9月27日号(7面)
ルクセンブルク当局との密約について、白を切ろうとするスカイカフェの幹部に対し、WJAのロッドが言った。 「私たちが報道し…
令和3年9月20日号(7面)
「今日は取材というよりも、ご相談に伺いました」WJA米国チーフのロッドが穏やかな口調で言った。 マッケルCEOは薄い唇の…
令和3年9月13日号(7面)
WJAのメンバーであるキャロル・オースが、ルクセンブルク税務当局の職員トム・ウイリアムスから入手した内部情報を、どう扱う…
令和3年9月6日号(11面)
アダムスは、部下たちが退室し1人になると、5階の自室の窓から、市井の人々が集う広場を見下ろした。 子どもたちが噴水の周…
令和3年8月30日号(7面)
「つまり、トムにより漏洩した百条文書は、6件だったということだな?」 アダムスの鋭い視線が、低く響く声とともに、呼びつけ…
令和3年8月23日号(7面)
ルクセンブルクは、実に風光明媚な場所である。読者の皆さんと、街の散策に出かけるといたしましょう。 ルクセンブルク中央駅を…
令和3年8月9日号(7面)
キャロルが入手した情報を、そのまま使うことに難色を示した仁野に、キャロルが反論した。 「誰もが知っている企業や世間に名の…
令和3年8月2日号(7面)
第百条租税特赦 第一項国家歳入庁長官は、外国企業等の自国内への投資促進、雇用確保の目的において、又はその他政令で定める場…
令和3年7月26日号(7面)
ルクセンブルク財務省と国家歳入庁が記者発表した内容は、組織としては何ら不正は行っておらず、キャロルに不正行為を垂れ込んだ…
令和3年7月19日号(11面)
ホテルの一室、仁野が目にしているタックス・スキームは、どれも実に巧妙で多彩であった。 これらのスキームにルクセンブルクの…
令和3年7月12日号(11面)
仁野はキャロルを、大英博物館の裏手にあるWJAのロンドン事務所まで歩いて送った。いつもなら、そんなことはしない。キャロル…
令和3年7月5日号(7面)
2人はのどかな公園を歩いていた。 「キャロル、君に情報提供した本人が殺されたというのかい?」 仁野の問いに、キャロルは薄…
令和3年6月28日号(7面)
ロンドンのリージェンツ・パークで再会した2人は、左右の頬を交互に重ね合わせ挨拶をかわした。キャロルは仁野の顔をまじまじと…
令和3年6月21日号(11面)
第四章垂れ込み 時は遡る――。 東京国税局の魚屋班が、新事務年度を迎え、顔合わせを行った日。 この物語を大きく牽引するそ…
令和3年6月14日号(7面)
中国からインドに賄賂資金を運ぶ方法として、“印僑”を使うことを想定した魚屋に、成山は同意した。 「僑」を用いる言葉に華僑…
令和3年6月7日号(7面)
次長室を辞去した魚屋は、その足で空いている小会議室に入室した。そしてそこから内線電話で成山を呼び出すと、異動の打診をした…
令和3年5月31日号(7面)
打ち合わせ中に呼ばれた魚屋が調査第一部次長室に入ると、加藤次長のほか、調査第一部長、調査管理課長、人事課長、人事課課長補…
令和3年5月24日号(7面)
「特官、万福のたくらみって、いったい何ですか?」引田が訊いた。 「我々は、万福商事単独の取引ばかりを見てきた。調査先は商…
令和3年5月17日号(7面)
J社からもらったUSBに保存されていたデータを見て驚嘆した高見の周りに、魚屋班の全員が集まってきた。 「このエクセルファ…
令和3年5月10日号(7面)
反面調査から戻った成山と高見は、国税局で2人の帰りを待っていた魚屋特官にさっそく復命した。 「どうだった、先方は?」 「…
令和3年4月26日号(7面)
病名を平然と打ち明けた三島は、 「気にしないで下さいよ。事実だから」と笑うと、高見の質問に答え続けた。 回答はどれも万福…
令和3年4月19日号(7面)
〈これまでのあらすじ〉国税局は、外注費支出の経費処理について会社を追及するが、十分な説明を得ることができず、外注先のJ社…
令和3年4月12日号(7面)
「君がいま話してくれたことを、久木君にも話したのかい?」 村上の問いに蓮田は首を振ると、 「もし、私の想像が事実だとした…
令和3年4月5日号(7面)
村上隆平が財務部の蓮田美来との待ち合わせの店に行くと、蓮田は店の奥で女将と思しき女性と歓談していた。 「わざわざご足労い…
令和3年3月22日号(7面)
■万福商事・海外第二事業部 「脇田さん」村上は自席から呼んだ。 窓を背に横並びで座っている脇田に、「たいしたものですね。…
令和3年3月15日号(7面)
関谷常務に呼び止められた脇田が、 「壮行会ですか?」と首を傾げた。 「嘘や。お前だけを引き留める口実や。まあええから、こ…
令和3年3月8日号(7面)
■東京国税局打合せ室 「いや、関谷常務には参りましたね」 席に着くなり成山が嘆息した。 午前の調査で引田が関谷を追及する…
令和3年3月1日号(7面)
「お聞きしたいのは、この件です」 引田は、ホチキス止めしたコピー用紙を、万福側の出席者に配布した。 皆が紙を繰る音が止む…
令和3年2月22日号(7面)
次は、SEこと引田の出番だ。 引田は魚屋陣営の中央に座し、向かいには関谷が、まるで睨みをきかせるように陣取っている。いや…
令和3年2月15日号(7面)
「例えば、J社とかに――」 そう指摘した高見に、会社側は、ただ無言のまま。高見が畳みかける。 「清流社と御社とは、資本関…
令和3年2月8日号(7面)
市場調査報告書の対価が、いくらだったらいいかと問うた関谷が、蛇のような目でじっと片澄を見つめている。 特官の魚屋が口を開…
令和3年2月1日号(11面)
シーンと静まり返った会議室で口を開いたのは、沖田だった。 「いや、いや、調査官も鋭いところを衝かれますな」沖田の笑い声が…
令和3年1月25日号(7面)
外注先との契約変更を認めた村上に、高見が「出来高制とは、具体的にどんなことですか」と問うた。 「年間いくらとあらかじめ決…
令和3年1月18日号(7面)
国税局の調査担当者にずっと話続けていた村上は、肩の力を抜くと、 「私が弊社に入った駆け出しの頃、先輩から、こんなことを言…
令和3年1月11日号(7面)
万福商事の小会議室で始まろうとするヒアリングには、会社側には、沖田を筆頭に財務部の5名、第二部事業部の村上、脇田部長代理…
令和3年1月4日号(11面)
やれやれ、成山は大きな溜息を吐くと、自席の椅子にどっと腰かけた。 「お疲れ様です。長かったですね」 「高見さんも、遅くま…