電子ブックビュー

連載「タックス・アムネスティ~租税特赦」山吹 涼

第28回/タックス・アムネスティ~租税特赦

2021年01月25日 税のしるべ 無料公開コンテンツ

 外注先との契約変更を認めた村上に、高見が「出来高制とは、具体的にどんなことですか」と問うた。

「年間いくらとあらかじめ決めておいた金額を支払うのが定額制です。出来高制は、こちらからの1つ1つの依頼に応じて、相手先が役務提供を行い、その都度、支払額が発生するものです。実際の支払いは、相手から月に一度請求が上がってきて支払っています」

「そうなんですね……」眉を曇らせた高見が、「契約の変更により、外注先から受ける役務提供の中身に、何か変化はあったのですか」

「それはないと聞いていますが」

 契約変更は、村上の前任者がやったことだ。確認のため、当時も部長代理だった脇田を村上は見た。

 脇田がコクリと頷いてみせた。

「役務提供の中身に変化がないのに、どうして契約変更をされたのですか」

「その点は、私からお話しましょう」

 沖田は咳払いを1つすると、

「定額制ですと、事業部が依頼しない場合でも、支払いが発生します。出来高制だと、毎月の支払額は変動しますが、依頼に見合った支払いになります。そして支払額や内容を、毎月、各事業部がチェックするため、支払いが抑制される牽制効果も働きます。よって、事業部の経費削減に寄与するのです。

 各事業部は予算管理を行っており、それを統括する財務部としても効果が認められるため、全社上げて勧めている施策でもあります」

 沖田の説明は穏やかなものであったが、揺るぎない自信を帯びていた。

「ありがとうございます。よくわかりました。その出来高制の方針は、外注13社に共通して適用されたんですね」

「無論です」

 沖田は高見を見て毅然と答えた。

 だが高見は、説明に合点がいかぬというように口を窄めている。国税局側のほかの4名も眉を顰め訝しげな表情だ。部屋に静寂が満ちていく。

 と、そこに、サッと小刀で部屋の空気を切り取るように高見が言った。

「でも今も、定額制と同じ支払いをしている会社がありますよね?」

 高見は、沖田と村上の2人を交互にじっと見た。中央に座す関谷は、睨みつけるように高見を見ている。

「……」

 返事のない2人に、高見は1枚の紙をテーブルに滑らせた。

「これは貴社の外注先の1つ、清流近海公司のものです。いただいたデータを、御社の事業年度の4月から翌年3月まででまとめたものが中央のX列。それを暦年の1月から12月まででまとめたものが右のY列です。暦年では、各月の金額は各々異なりますが、総額は端数のないピッタリの金額になります。3年前から見ると、18億円、12億円、12億円の支払いです。

 出来高制の契約となっていながら、定額制と等しい。これは、提出のあった契約書の内容や、これまでのご説明と矛盾していませんか?」

 不意に虚を衝かれたように、一瞬、万福側の誰もが言葉を失った。

イラスト=渡辺 正義
ページの先頭へ