タックス・アムネスティ~租税特赦
山吹 涼
国税局特別国税調査官(通称、「特官」)率いる精鋭部隊が、グローバルに事業を展開する商社を相手に税務調査を実施し、国際的租税回避を突き止めていく連載小説です。(この連載はフィクションです。実在の会社・人物等とは一切関係ありません)
令和2年(2020年) 24件の記事
令和2年12月21日号(7面)
プログラミングの知識に長けたSEこと引田調査官は、海外第二事業部長・村上の就任後も、脇田部長代理が異なるIDを用い、村…
令和2年12月14日号(7面)
「SE、君は、何をしてるんだい?」 成山総括主査は、PC画面に釘付けの引田調査官に背後から声をかけた。 万福商事はコロ…
令和2年12月7日号(11面)
1週間の事業概要ヒアリングを終えた魚屋班は、今後の調査のターゲットとして、中国に加え、売上金額が増加しているインドの取…
令和2年11月30日号(7面)
魚屋班の皆が見つめる中、脇田代理の説明が引っかかるといった成山が、 「たしかに、中国語が不得手の者は、日本語で意思疎通…
令和2年11月23日号(7面)
脇田は自嘲するような笑みを浮かべ、「ええ、いみじくも中国担当でありながらお恥ずかしいんですが、私なんぞは中国語ができな…
令和2年11月16日号(7面)
〈これまでのあらすじ〉 多額の外注支出に不審を抱く国税局は、万福商事の税務調査に着手した。調査に先立ち、会社の新任担当…
令和2年11月9日号(7面)
「先輩の会社に、万福商事は何を依頼していたんです」隆平は尋ねた。 「中国での市場調査さ――」 「実際、中国に依頼してい…
令和2年11月2日号(7面)
三島は、庭をじっと見て話した。 「病気がわかったのは、4年前。俺が会社の社長を打診された直後さ。 近い将来、俺が存在し…
令和2年10月26日号(7面)
三島は、隆平に言った。 「本当のところはわからないのさ、俺にもな。一見成り行きで俺は辞める羽目になった。だが、実はそう…
令和2年10月19日号(7面)
これまでと打って変わり、三島は穏やかな表情で言った。 「来年の桜は、きっと見ることはできないだろう。医者からは持ってこ…
令和2年10月12日号(7面)
三島は眉間に深い皺を寄せたまま、隆平に話し続ける。 「今でこそ万福商事は、資源開発、IT投資で過去にない利益を上げてい…
令和2年10月5日号(7面)
三島は穏やか口調で語り始めた。 「万福商事のロシアへの支払いが、ロシアの政治家や役人に賄賂として渡ったんじゃないのかと…
令和2年9月28日号(7面)
「なにがラッキーなんです⁉」 自分の知らないところで不正が行われていたことが、ラッキーだと言った三島に怒った村上隆平は…
令和2年9月21日号(7面)
どうして不正に気づいたかを問われた村上隆平が無言でいると、三島は、 「えらく丁寧だったのさ。最終代金の支払に関するもの…
令和2年9月14日号(7面)
玄関先で、頭が禿げ上がった老人が、「よく来たな」と言った。 深く落ち込んだ眼窩の奥で、妙に潤んだ瞳が隆平をじっと見てい…
令和2年9月7日号(11面)
バスを降りると村上隆平は三島の家に向かった。歩きながら三島と初めて会った日のことを思い出していた。 三島と沖田は大学の…
令和2年8月31日号(7面)
第二章独白 時は前後する―― 村上隆平は、北浦和駅のバスターミナルから、一人バスに乗り込んだ。先輩の三島に会って話を聞…
令和2年8月24日号(7面)
調査初日―午後 万福商事は河原田が抜け、代わりにアジア地域の統括責任者・関谷常務がテーブルに着いた。隣に、中国事業を担…
令和2年8月17日号(7面)
調査初日―― 朝の陽射しにまばゆい皇居が見下ろせる万福商事本社ビル12階の中会議室には、名刺交換を終えたばかりの17名…
令和2年8月3日号(11面)
来週からの万福商事の税務調査を控え、魚屋班は下準備に余念がない。 「皆さん、これどう思われます?」 高見調査官は、一枚…
令和2年7月27日号(7面)
常務室を辞去した沖田は、廊下に出るとスマホでLINEをした。財務部の自席に着くと、返事は既に来ていた。 “今晩ならOK…
令和2年7月20日号(11面)
東京国税局の魚屋からの電話を終えたばかりの万福商事財務部長の沖田修三(おきた・しゅうぞう)は、告げられた調査日程をメモ…
令和2年7月13日号(11面)
「成山総括も、何か外国語がペラペラなんですか」新人の引田良介が訊いた。 「そう見えないか?」 すかさず引田が顎を強くひ…
令和2年7月6日号(7面)
コロナ危機は新薬の出現で去った。 だが、おびただしい数の命が失われ、各国の財政に深刻なダメージを与えた。棄損した財政を…