水到魚行
エッセイスト・玉村 豊男
令和2年(2020年) 48件の記事
令和2年12月21日号(7面)
去年(こぞ)今年(ことし)貫く棒のようなもの。高浜虚子、76歳の作品。私はいつも、新年になると新聞やテレビが突然未来の…
令和2年12月14日号(7面)
物書き商売をしていると、毎月何冊か本が送られてくる。出版社からの新刊の案内や、見知らぬ著者からの献呈本のほか、知り合い…
令和2年12月7日号(11面)
年末が近づくと慌てて身の回りの片付けをするのは毎年のことだが、終活のつもりでなるべくモノを捨てようと日頃から心がけてい…
令和2年11月30日号(7面)
「うちは帆足計に入れるのよ」子供の頃、母親がよくそう言うのを聞いた。姓は帆足、名は計。変わった名前だが、いまでも突然、…
令和2年11月23日号(7面)
漢文の授業で習った言葉のうち、いまでも印象に残っているものがふたつある。ひとつは、「カワイイ(可愛い)」。可愛いの可は…
令和2年11月16日号(7面)
若い頃、モロッコを旅していて、列車の中でアラブ人の女性と向かい合ったことがある。 座席は6人掛けのコンパートメント(個…
令和2年11月9日号(7面)
相変わらず、ほぼ毎日、朝からアトリエに籠もって絵を描いている。春から秋まではおもにガーデンから手折ってきた花を写生する…
令和2年11月2日号(7面)
ザクロが届く季節になった。割れた果皮から赤い実が覗くザクロは、私が好んで絵に描く画題である。が、家の周囲では標高が高過…
令和2年10月26日号(7面)
毎年、夏の終わりから秋にかけて、うちのピノ(シバ犬メス8歳)はアレルギーに悩まされる。今年はとくにひどく、一日中休みな…
令和2年10月19日号(7面)
私は、けさ、1832年10月16日、ローマのジャニコロの丘の上、サン・ピエトロ・イン・モントリオ教会にいた。素晴らしい…
令和2年10月12日号(7面)
50年前の大阪万博のときは、インバウンドツアーの通訳ガイドとして働いていた。東京に一泊して観光を終えてから、バスで鎌倉…
令和2年10月5日号(7面)
仕事場や寝室には新しい電波時計を掛けたが、居間の柱時計は30年前から同じものを使っている。放っておくと1週間に5分くら…
令和2年9月28日号(7面)
1945年産のワインはもう残っていないだろう、と書いたら、いや、まだ持っている人がいる、100年経ったら飲もうと計画し…
令和2年9月21日号(7面)
ブドウの収穫がはじまった。ピノ・ノワールやシャルドネなどは9月後半から、メルローは10月に入ってから。これからの約1カ…
令和2年9月14日号(7面)
暑い日が続いたので、散歩の距離が短くなっていた。ふつうは朝食の前に犬を連れて、山の上から森に囲まれた道を集落まで下りて…
令和2年9月7日号(11面)
名著『美味礼賛』をあらわした19世紀フランスの食通ブリア=サヴァランは、客を招待する場合は10人以下で、たがいに初対面…
令和2年8月31日号(7面)
この半年ほど外出する機会はめったにないが、ときどき、訪ねてくる古い友人や知人と会食をすることがある。 昔はよく人を招い…
令和2年8月24日号(7面)
願わくは、夏の太陽が容赦なく照りつけることだ。 ……と書いたら、本当に容赦なく太陽が照りつけて、酷暑の夏休みになってし…
令和2年8月17日号(7面)
果てしなく降り続く雨がやんで、ようやく夏の太陽が戻ってきた。今年の梅雨は、本当に長かった。それも連日の強い雨。いたると…
令和2年8月3日号(11面)
数え42歳の厄年に、輸血からC型肝炎にかかった。肝炎は発症から半年くらいで治れば急性、1年程度長引くと遷延性、それ以上…
令和2年7月27日号(7面)
4カ月ぶりで上京した。病院の検査のためである。慢性肝炎が薬で治った後に肝臓ガンが発生したことはすでに書いたが、その宣告…
令和2年7月20日号(11面)
雨が上がったのでジャガイモを掘った。このあたりではジャガイモの収穫は梅雨の終わり頃になるので、湿った地中でイモが腐る前…
令和2年7月13日号(11面)
フェイスブックもツイッターもやったことがない。インスタグラムやティックトックとは無縁だし、ユーチューブさえ自分から見よ…
令和2年7月6日号(7面)
ジョルジョ・モランディという画家がいた。1890年イタリアのボローニャに生まれ、終生故郷の町を出ることなく、ふたつの世…
令和2年6月29日号(7面)
一年の半分を過ぎた夏至の週末から、ようやく今年の一年がはじまった。私が経営するワイナリーのカフェとショップは、ゴールデ…
令和2年6月22日号(7面)
ダイヤモンド・プリンセス号が話題になりはじめた2月頃から、ずっとテレビのニュースとワイドショーを見続けてきた。雑多な情…
令和2年6月15日号(7面)
食後には、なにかしら甘いものが欲しくなる。洋食でも和食でも、コース料理はデザートで締めるのがならわしだ。最後に甘い味を…
令和2年6月8日号(7面)
会社が終わっても真っ直ぐ家に帰らず、仕事仲間と居酒屋で一杯やってコミュニケーションをはかる。あるいは、大事なビジネスの…
令和2年6月1日号(7面)
いまから20年前に、パリをスタートしてロンドン、アムステルダム、ニューヨーク、ロサンゼルスと、回転スシの店を訪ねて世界…
令和2年5月25日号(7面)
サルを、真っ暗な箱の中に、何日間か閉じ込める。何も見えないだけでなく、自分が発する声も聞こえないようにした、感覚遮断の…
令和2年5月18日号(7面)
髭をたくわえるようになったのは、30歳を少し過ぎる頃からだろうか。実は、もっと前、ヨーロッパをヒッチハイクで旅行してい…
令和2年5月11日号(4面)
相変わらず、ワインは毎日飲んでいる。夕方5時になると台所へ下りて行き、冷蔵庫から白ワインを取り出して、料理をはじめる前…
令和2年4月27日号(4面)
クラスターや3密と並んで、社会的距離、という言葉が急速に人口に膾炙した。人と人とを隔てる距離のことで、2メートルまたは…
令和2年4月20日号(4面)
三寒四温というにはやや極端な気候の変化があって、一気に春がやってくるというスピードではなかったが、4月も中旬の声を聞く…
令和2年4月13日号(7面)
2月上旬から現在まで、一度だけ病院の検査のため日帰りで上京した以外は、ずっと信州に蟄居している。この後も、7月になるま…
令和2年4月6日号(7面)
天気がよかったので、ひさしぶりに裏山にある城跡まで歩いてみた。自宅がある里山の天辺から尾根伝いに森の中を10分ほど行く…
令和2年3月23日号(7面)
暖かい春に、ちょっとした寒の戻りがあって、3月14日に雪が降った。降り積もって一面の雪景色になったのは、12月23日の…
令和2年3月16日号(7面)
一日中、テレビのニュースばかり見ている。定時のニュースだけでなく、いわゆるニュースワイドといわれる番組は、朝、午後、夕…
令和2年3月9日号(7面)
かつて客船が大陸間の移動手段として主要な地位を占めていた頃、船には、はっきりとした格差が目に見えるかたちで存在していた…
令和2年3月2日号(7面)
昨年の夏に私が乗ったクルーズ船は、サン・プリンセス号というダイヤモンド・プリンセス号の姉妹船で、大きさはひとまわり小さ…
令和2年2月24日号(7面)
その日は冬にしては暖かい日だったが、東京駅前から私が乗り込んだタクシーは、左右の窓が半分以上開けられていた。走り出して…
令和2年2月17日号(7面)
アトリエは20畳以上の広さがあるが、絵を描くためのスペースは隅のほうの一部だけで、面積の大半はトレーニングマシンが占め…
令和2年2月10日号(7面)
携帯電話は持っているが、電話をすることは滅多にない。スマホは原則として消音モードにしてあるので、電話がかってきたとして…
令和2年2月3日号(11面)
毎日の料理をするのは私の役目だが、後片付けは妻に頼んでいる。だから私は夕食が終わると、そのまま寝室へ行ってベッドに横た…
令和2年1月27日号(7面)
正月明けに帰省を終えて帰ろうとする新幹線の乗客に、テレビのリポーターがインタビューをしていた。「お正月は楽しかった?」…
令和2年1月20日号(7面)
年明けの賀状やメールの交換では、よろしくお願いします、という言葉を何度使ったことだろう。今年もよろしくお願いします。今…
令和2年1月13日号(7面)
世界の情勢は不穏だが、日本の正月は穏やかな天気に恵まれた。寒さの到来は遅かったものの、さすがにこの時期になると広葉樹は…
令和2年1月6日号(11面)
元旦はいつものように朝早く起き、いつものように犬の散歩と朝食を済ませたあと、いつものように書斎に入って原稿を書いた。昼…