A 優越的地位の濫用として問題となるおそれのある行為は次のとおりです。
①取引対価の引下げ
取引上優越した地位にある事業者(買手)が、免税事業者との取引で仕入税額控除できないことを理由に取引価格の引下げを要請し、再交渉で双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではありません。しかし、再交渉が形式的なものにすぎず、仕入側の事業者(買手)の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合には、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となります。
②商品・役務の成果物の受領拒否等
取引上の地位が相手方に優越している事業者(買手)が、仕入先から商品を購入する契約をした後に、仕入先がインボイス発行事業者でないことを理由に商品の受領を拒否することは、優越的地位の濫用として問題となります。
③協賛金等の負担の要請等
取引上優越した地位にある事業者(買手)が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である仕入先に対し、取引価格の据置きを受け入れる代わりに、取引の相手方に別途、協賛金、販売促進費等の名目で金銭の負担を要請することは、協賛金等の負担額およびその算出根拠等について仕入先との間で明確になっておらず、仕入先にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合や仕入先が得る直接の利益等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担となり、仕入先に不利益を与えることとなる場合には、優越的地位の濫用として問題となります。
④購入・利用強制
取引上優越した地位にある事業者(買手)が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である仕入先に対し、取引価格の据置きを受け入れる代わりに取引に係る商品・役務以外の商品・役務の購入を要請することは、仕入先が事業遂行上必要としない商品・役務であり、またはその購入を希望していないときであったとしても、優越的地位の濫用として問題となります。
⑤取引の停止
事業者がどの事業者と取引するかは基本的に自由です。しかし、取引上の地位が相手方に優越している事業者(買手)が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である仕入先に対して、一方的に、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格など著しく低い取引価格を設定し、不当に不利益を与えることとなる場合であって、これに応じない相手方との取引を停止した場合には、独占禁止法上問題となるおそれがあります。
⑥登録事業者となるような慫慂等
課税事業者が、インボイスに対応するために、取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請すること自体は、独占禁止法上問題となるものではありません。しかし、それにとどまらず、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上または下請法上、問題となるおそれがあります。また、要請に応じて課税事業者となるのに際し、例えば、消費税の適正な転嫁分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置く場合についても同様です。
参考:公正取引委員会など公表の「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」のQ7
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