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過去の連載「数字から見る 経済・社会」獨協大学教授・経済アナリスト 森永 卓郎

第4回/会食だけが原因なのか

2021年01月25日 税のしるべ 無料公開コンテンツ

 3・5%。新型コロナウイルスの新規陽性者のうち、会食を介して感染した人の割合だ。1月8日から東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県に緊急事態宣言が発出され、その後も対象地域が拡大している。今回の緊急事態宣言では、昨年の時のような幅広い業種に自粛を求めるのではなく、飲食店に絞った自粛要請が行われることになった。新型コロナの流行から1年が経って、会食を介する感染が急所であることが分かったからだという。

 しかし、そのことは、本当に正しいのだろうか。例えば、2447人の新規陽性者を出した1月7日の東京都のデータでみると、感染経路が分かっている802人のうち、家庭内が409人、会食が85人、施設内が67人、職場内が62人、夜の街が6人となっている。感染経路別で最も高い比率となっているのは、67・2%を占める「感染経路不明」だ。

 3・5%に過ぎない会食に全ての責任を押し付けるのは、科学的な判断とは言えないと私は思う。また、宣言で自粛が求められるのは、20時以降の飲食店の営業だけだ。ランチタイムが大丈夫で、ディナータイムだけが大きな感染リスクを持つという判断も、理解できない論理だ。

 もしかすると、財政負担の問題で、対象とする業種や時間を絞り込まざるを得なかったのかもしれない。だが、そうだとすると、飲食店に営業時間短縮を求めて、協力金を支払うよりもずっと効率的な方法がある。それは、感染状況が厳しい大都市に絞って、大規模なPCR検査を行い、陽性者を隔離することだ。昨年は、PCR検査拡大に反対する人が多かった。試薬が足りないし、陽性者が増えると医療崩壊してしまうという理由だった。しかし、いまは試薬も十分あり、無症状者は自宅待機でよいから、医療崩壊につながることはないだろう。私には、政府の対策で感染が収束に向かうとは、とても思えないのだが、私は医療の専門家ではないので、専門家の検討を経て決定した政府の対策のほうが正しいのかもしれない。

 どちらが正しいか、本稿が掲載される頃には、明らかになっているだろうか。

JDL2
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