3月1日施行の改正会社法の内容を確認、株式交付制度は3年度税制改正でも法整備
2021年01月25日 税のしるべ 無料公開コンテンツ
令和元年12月に公布された改正会社法が今年3月1日に施行される(一部は4年中に施行の予定)。会社法改正は株主総会の運営や取締役の職務の執行の一層の適正化等を図ることを主な目的としている。企業買収に絡む株式交付制度の創設では、3年度税制改正で関連する法整備が行われるなど税制が関わってくる制度改正もある。ここでは、会社法改正のうち主な内容を紹介する。
今回の改正のうち、税制が大きく関わるものには「株式交付制度の創設」がある。同制度は、他の株式会社を買収しようとする買収会社が自社株式を対価に被買収会社を子会社化することができるように、買収会社が被買収会社の株式をその株主から譲り受け、対価として買収会社の株式を交付できる制度を設けるもの。
同制度の創設に向けて3年度税制改正では、買収会社が自社の株式を対価として買収を行う際の被買収会社株主の株式譲渡益の課税を繰り延べることとなった。実効的な制度とするため、事前認定を不要とし、現金を対価の一部に用いるものも対象とする(総額の20%まで)。
いわゆる会社役員賠償責任保険(D&O保険)が適切に運用されるように契約の締結に必要な手続等を明確にするなど役員等のために締結される保険契約に関する規定も新たに設けられる。本改正を前に経済産業省は昨年9月に国税庁に対して、改正法施行後の同保険の保険料の税務上の取扱いを照会し、国税庁からは「会社が、改正会社法の規定に基づき、当該保険料を負担した場合には、当該負担は会社法上適法な負担と考えられることから、役員個人に対する経済的利益の供与はなく、役員個人に対する給与課税を行う必要はない」との確認が得られたことを公表している。
その他の改正は、社外取締役の設置の義務付けなど上場企業等に関連するものが多いが、株主提案権の濫用的な行使を制限するために導入される株主が同一の株主総会で提出することができる議案の数を10までとする上限設定は、取締役会設置会社であれば適用される。
また、4年中の施行が予定されているものの中には、株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主にウェブサイトのアドレス等を書面により通知することで株主総会資料を提供することができる制度(株主総会資料の電子提供制度)の創設がある。
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