会計検査院は11月10日、令和元年度決算検査報告を公表した。この中では、留保金課税の適用対象から除外されている資本金の額が1億円以下の「中小特定同族会社」に対する検査が行われ、中小特定同族会社と留保金課税の適用対象となる「特定同族会社」との間で課税の公平性が保たれていない状況となっているおそれがあるなどとされている。
同報告では、中小特定同族会社の財務基盤について検査した結果、①中小特定同族会社は特定同族会社と比べて配当を行っていない傾向にあり、中小特定同族会社と特定同族会社との間で課税の公平性が保たれていない状況となっているおそれがある。また、②中小特定同族会社が特定同族会社の親会社となっている場合、親会社が株主に配当を行わず、利益を留保することによって留保金課税がもうけられた趣旨にそぐわないおそれがあるといった指摘がなされた。
このため、検査院は財務省に対して留保金課税の適用範囲について、さまざまな視点から有効性および公平性を高めるよう検討を求めた。
検査院の指摘は、その後の税制改正に結び付くことが多く、留保金課税の適用範囲も本指摘を受けて変更される可能性がある。
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