過去の連載「軽減税率制度・インボイス方式~押さえておきたい実務上の留意点」税理士・芹澤光春

第2回/施行日をまたぐ取引に適用される税率

2019年04月08日 税のしるべ 無料公開コンテンツ

 税率引上げに当たっては、施行日をまたぐ取引に新旧どちらの税率が適用されるのか、迷う事例があります。本稿では、9月30日チェックイン、10月1日チェックアウトの場合にどちらの税率が適用されるのか、検討したいと思います。


1 原則的な資産の譲渡等の時期

 宿泊契約とは、単に部屋を賃貸する契約ではなく、顧客の安全、衛生等に責任をもって、宿泊させたり飲食させたり、荷物を預かったりする、総合的なサービスの提供を請け負う契約です。このような、目的物の引渡しを要しない請負契約については、役務の提供を完了した日に資産の譲渡等が行われたものとして取り扱われることになります(消基通9-1-5)。
 宿泊サービスは、通常1泊を取引単位としますので、役務の提供を完了した日は翌朝ということになります。だとすると、9月30日にチェックイン、10月1日にチェックアウトの宿泊料に適用される税率は、原則として、10月1日の適用税率である新税率(10%)ということになります。


2 継続適用と特例

 これに対して、「平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A【基本的な考え方編】」問6には、代金を前受けで受領し、中途解約があっても未経過部分の返還をしない契約については、継続適用を要件として、受領した日の課税売上にできるため、受領した日の税率が適用される旨が示されています。
 宿泊料を前受けで受領し、客が泊まっても泊まらなくても返還することのないタイプのホテルが最近増えていますが、このタイプのホテルの宿泊料は、チェックインした日の売上にすることができるということです。つまり、9月30日チェックイン、10月1日チェックアウトの宿泊料では、旧税率が適用されることになります。


3 計上の仕方の実例

 では、宿泊料の計上の仕方について実例でみてみましょう。

 【例】令和元年9月30日から10月2日の2泊3日分の宿泊料を、9月30日に全額前受けする場合。

 宿泊サービスは通常1泊を取引単位としますので、本事例は、(1)9月30日から10月1日、(2)10月1日から10月2日の2取引ということになります。
 宿泊料は役務の提供を完了した日、すなわち翌朝に計上するのが原則です。これは代金を前受けしている場合でも同様です。したがって、(1)は10月1日、(2)は10月2日の課税売上として、両方とも新税率が適用されます。
 ところが、このホテルが夜の時点で継続して課税売上に計上している場合には、(1)は9月30日の売上として旧税率が適用されることになります。(2)は9月30日に前受けしていますが、取引単位が異なるため10月1日の課税売上となり、新税率が適用されることになります。


4 計上の仕方あれこれ

 このように考えると、税率引上げ時にどちらの税率が適用になるかという問題は、実は、継続していつの課税売上としているか、によって決まるということがわかります。
 ある税務調査において、「この辺の旅館は、夜70%、朝30%で売上を計上しているようですが、先生はご存じありませんか」と言われて驚いたことがあります。深夜12時にチェックアウトしても70%は返還しない宿泊契約の場合、夜に70%の売上を計上することが合理的といえるでしょう。このような場合には、70%については旧税率が、30%については新税率が適用になるものと思われます。

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