日本の小・中学生は、学校に通えることがどんなに幸せなことか知っているのだろうか。

 私はフィリピンで生まれた。十歳の時、日本で仕事に就いた父を頼って、来日した。そして、日本の学校に通うことになった。教室に入ると真新しい教科書が机の上に置かれていた。写真やイラストの付いたきれいな教科書に、心がうきうきしたのを今でも覚えている。更に驚いたのは、その教科書は私の物になるということだった。

 フィリピンでは、公立の学校に通う生徒は教科書を借りて勉強する。つまり、次の年には、その教科書を別の人が使うということだ。私立の学校は、教科書を買って勉強する。だから、日本で教科書を無償で配ってくれるということに驚き、同時にとてもありがたいと思った。

 しかし、十歳の私は日本語が話せなかった。読むことも書くこともできなかった。教科書に書いてあることが何も理解できなかった。でも、私は、私だけの教科書の内容を知りたいと思った。だから、一生懸命に勉強した。ひらがなを覚え、テレビや友だちとの会話で日本語の言葉をたくさん身に付けていった。教科書に出てくる漢字には、ひらがなでルビをふった。そうして、私の教科書はどんどん私だけの教科書になっていった。

 今、私は中学二年生になった。(私の学校では、八年生と呼ぶ。)今でも、私の教科書の漢字には、所々、ひらがなのルビがふられている。そして、知らない言葉が出てくると、どんどん友達や先生に聞いて、新しい言葉の使い方を覚えている。そんな私に、友達が、「なんでそんなに勉強熱心なの。」と聞いてきた。友達は、「勉強って、あまり好きじゃない。めんどう。」と言った。

 彼らは、この当たり前だと思っている日常が、本当はとても恵まれていることを知らないのだ。日本の法律と税金が小、中学生の学ぶ権利を保証してくれているのだ。

 フィリピンでは、学校に通えない子供も多い。家族のために、田んぼや畑の手伝い、清掃作業等のアルバイトをするのだ。水道や電気がなく、川の水をくみ、ろうそくで生活している地区も多い。学校のトイレを使う時は家から持ってきたトイレットペーパーを使うことも普通だ。

 誰もが平等に学ぶチャンスをもらえる日本。それを支えている税金。日本の小、中学生に勉強できる幸せをもっともっと感じてほしい。そして、家族や多くの人の税金のおかげで、今の恵まれた生活があるのだと知ってほしい。

 私も大人になったら、多くの子供達のため、そして、世界中の子供達が学校に通えるように、自分だけの教科書を持てるようになってほしい。その手伝いができるような大人になれるよう、今日も頑張って勉強しよう。

平成30年12月3日号

平成30年12月3日号