「おい、大丈夫か。」友人が駆け寄ってくる姿が見える。大丈夫だったらこんなに痛くないだろう、と思いながらも「大丈夫だよ。」と言った。しかし、全く痛みが引かない。仕方なく母に迎えに来てもらい、病院に行った。


 診断の結果、骨折だった。部活動を早退し病院に着いた後、すぐにレントゲンを撮ってもらった。腕はギプスでがっちり固定され、包帯で何重にも巻かれた。少しオーバーではないか、と母に言ったところ、母は「まあ、あと一年だから。今、サービスを受けといたほうがいいよ。」と言った。

 僕が住む栃木市には「こども医療費助成制度」といったものがある。これは子育て支援の一環で、栃木市に住民登録をしている中学三年生までの子供の医療費を、市が全額負担してくれるものだ。この制度によって、お金のことを気にせずに病院を受診することが出来る。しかし、これは義務教育終了、つまり中学三年生までの期間限定だ。だから、母はあんなことを言ったのだろうか。

 しかし、僕は母の考えに疑問を抱いた。お金がかからないから、病院を受診するのだろうか。それでは助成制度の本来の目的に反するのではないか、そう考えた。この制度が成り立っているのは、皆が払っている税金のおかげである。栃木市民全員が平等に税金を払っているが為に、僕ら子供達に恩恵があるのだ。しかし、中には税金を払いたくない人だっているのだろう。払うことすらままならない生活をしている人だっているのだろう。それでも、払いたくない気持ちを抑えて、苦労して払ってくれている。それなのに、大した病気や怪我ではないのに、病院を受診していないだろうか。今のうちに、などと言って必要以上に薬などを処方してもらっていないだろうか。自分の中にも少しだけ、タダだからいいや、と思っている自分がいたことは否めない。自分の考えの甘さを痛感した。

 母に頼んで、骨折したときの医療明細書を見せてもらった。決して安いとは言えない金額である。僕に対してこんなにも多くの税金をかけてもらっている。初めて、税金と僕とのつながりを感じた瞬間だった。

 僕達の医療費は無料なのか。それは違うだろう。市民全員が払う税金分の費用がかかっている。その巨額の税金が、僕達の生活を支えているのだ。僕達は常にそのことを心に留めておかねばならない。

 僕達のすぐそばに税金は存在する。「税金から出ているから」とか、「税金で払ってほしい」などの税金を軽んじるような考えは持つべきではない。税金から出ているから、無料だからこそ、税金の大切さをもう一度認識し、将来税金を払うことがあったときに、しっかりと、税金が納められる大人になりたい。

平成29年12月4日号

平成29年12月4日号