「消費税がなかったら、もっと買い物ができたのにね。平成三十一年から、消費税が十パーセントに上がるんだって。嫌だね。」と、料理をしている母に話しかけていたら、「何を言っているの。彩ちゃんが唯一払っている税金でしょ。ちょっとくらい、社会の役に立つことをしてもいいんじゃない。」と、逆に母に言い返されてしまいました。母だって、「思ったよりも住民税が引かれているのね。」なんて、愚痴を言ったりするのに。

 でも、我が家にとって税金は、「感謝」の一言でしかありません。もし、なかったら...。考えるだけでも恐ろしくなります。

 それは、八年前のことです。私の弟は難病にかかり、救急車で病院に搬送されるとすぐに、CT、MRIなどの検査や手術が行われました。それからというもの、弟は点滴での投薬や放射線治療、再び何回もの手術や移植など、長い闘病生活のスタートとともにあらゆる治療が必要になりました。

 突然の入院でパニックになっていた母に、主治医の先生は優しく、病状や治療の説明と同時に、弟のような難病を抱えた小児のための慢性特定疾病医療給付制度の申請手続きを、すぐにするよう勧めて下さったそうです。弟には高度な最先端の医療が必要でした。しかし、その検査や治療の一つひとつに、数十万から数百万円の費用がかかるのです。可愛い我が子のためには、貯金を全部使ってでも、家を売ってでも、借金をしてでも助けてあげたいと両親は思ったそうです。しかしながら、先の見えない治療費を負担するには、我が家だけではどうにもなりません。

 残念ながら、弟は一年半前に息を引きとりました。しかし、最期まで、悔いなく最善の治療を受け、家族とかけがえのない日々を過ごせたのは、紛れもなく税金からなるこのような給付制度があったからに他なりません。

 母は、役所の窓口で医療費の負担を軽減するためのこの申請手続きをする度に、我が子のために皆が一生懸命働いて納めてくれた税金を使わせていただくことへの感謝の気持ちと、申し訳ない気持ちでいっぱいになったそうです。私は、病院で病魔と闘いながらも笑顔を忘れない子供達の顔を今も鮮明に覚えています。難病を抱えた子供達が高額な費用のために治療に専念できなかったり、その家族が崩壊するようなことは決してあってはなりません。その反面、病気の当事者もその家族もそれに甘えるだけでなく、病気と真摯に向き合い、諦めずに闘うことが必要不可欠です。

 今の私には、何が出来るでしょうか。おそらく多くの方々が、税金を納めることは支出となり、マイナスのイメージを持っていることでしょう。しかし、素晴らしい恩恵を受けた私達家族のような人間が、税金が心も身体も救う、プラスになる、ということをイメージではなく、事実として根気強く伝え続けていくことが使命だと思います。

平成29年12月4日号

平成29年12月4日号