「おじいちゃんの遺言?」

 私は、母の口から出た言葉に驚き思わず聞き返した。

 私の家は祖父の代から建設業を営んでいる。私の母は私が生まれた年に祖父の後をついで、いつも忙しそうにしている。今年受験生の私は、自分の将来について色々と考えることが多くなり、母に会社を経営するのに一番大切なことは何か?と軽い気持ちで聞いた。すると母は、

 「おじいちゃんの遺言やね。」
と言い祖父の残してくれた言葉を話してくれた。

 祖父は入院していた病室に母を呼んでこう言ったそうだ。

 「経営者として一番大切な事は納税する事。利益を出して納税する。これを守れば会社は強くなる。納税する為には利益を出さなければいけない。つまり、納税を目標にすれば会社も黒字になる。そして経営者として、利益の一部を税金として納める事が一番の社会貢献だと信じてやってきた。すべての人にすべての物に分配される税金。これ以上平等なものはない。そのことを忘れないで必ず守ってほしい」

 それから一月後祖父は亡くなった。母は、それからずっと祖父の言葉が支えとなって、仕事に励んでいる。

 私はその話を聞いて、税金というのは取られたり、納めさせられたりするものだから嫌だという人もいるが、自分から納めるものという意識を持つことが一番大切な事だとわかった。そして、すべての人が少しの額でもいいから、いつも納税を心掛けたとしたら、日本は今以上に社会保障や教育などが行き届いたすばらしい国になると思った。

 私が五歳の時に亡くなった祖父はいつも優しかったが、母にだけはとても厳しかった事を覚えている。でもそれは立派な経営者になってほしいという母への深い愛情だったと思う。そう考えたとき、納税という意識も、自分の国への深い愛情なのではないかと感じた。生まれてから成人するまでは教育費の恩恵を受け、働くようになったら全員で一生懸命に納税し、老後にはまた充実した医療を少ない負担で受ける事が出来る。この税金の恩恵・納税・恩恵のサイクルの素晴らしさを、多くの人が祖父と同じ様に思える為に、これからは私がこの遺言を伝えて行きたいと思う。

 これからの私に必要な事は、税金の仕組みについて勉強し理解を深める事だ。納税した大切なお金が無駄なく、納得のいく使われ方をしたのか疑問を持ったり、意見が言える高校生になりたいと思う。

平成29年12月4日号

平成29年12月4日号