領収書等の国税関係書類のスキャナ保存制度は平成26事務年度(26年7月から27年6月)末に152件だった承認件数が、27事務年度末に380件、28事務年度末には1050件となり、2年間で約7倍にまで増加した(表参照)。同制度は27年度税制改正で3万円以上の領収書等が対象に加えられるなどし、28年度改正ではスマホ等による社外での読み取りを容認するなどの改正が行われ、使い勝手が大きく向上。最近は中小企業での導入事例も増えている。その現状を制度に詳しい袖山喜久造税理士に聞いた。


 ――最初にスキャナ保存制度がどのようなものか簡単に教えてください。

 スキャナ保存制度は税法で保存が義務付けられている書類で、紙で保存することが原則となっているものをスキャンデータで保存する制度のこと。データで保存するには、電子帳簿保存法に基づいて事前に所轄税務署長に申請し、承認を得る必要がある。電子帳簿保存法にはスキャナ保存について入力や保存の要件が定められており、そうした要件を満たしたうえで保存をしなければならない。


 ――制度の承認件数が劇的に増えている。税制改正のどのような点が評価されているのか。

 従来、スキャニングしたデータには「実印」に相当する証明力のある電子署名を付さないといけない点が大きなハードルになっていた。27年度税制改正で電子署名が不要になるとともに、契約書、領収書、請求書などの重要な書類の入力期限等の要件の緩和、また契約書・領収書等の国税関係書類は金額に関わらずスキャナ保存の対象となり、28年度改正ではそれまで書類の読み取りを行うスキャナは原稿台と一体型でなくてはならなかった点がスマホ等でのスキャンも認められるようになった。
 働き方改革が叫ばれる中で、いかに効率よく業務を遂行するかが多くの企業の命題になってきている。経費精算や支払処理など営業や経理の業務の中でネックになるプラスαの事務をいかに削減するかを考えたとき、紙での処理をデータでの処理に切り替えることによって、例えばスマホを使った経費精算や全国の営業拠点で発生した請求書をデータ化して本社に送り、本社から支払うといった処理が迅速かつ確実に行え、業務を効率化でき、内部統制の強化も図れる。そうした点で今回の改正は大企業を中心にインパクトがあった。


 ――「大企業を中心に」とのことですが、中小企業にとってはどうなのでしょう。

 大企業が会計業務や帳簿書類の電子化の目的として挙げる理由の9割方は、紙の書類の保管コストや従業員の人件費削減、業務の効率化、内部統制の強化が占めるが、これらは中小企業であっても同じ。大企業ほど多くの人員を割けない経理業務であったり、各社員がやらなければならない経費精算の業務を効率化することで営業効率がよくなったり、残業が減ったりすることは変わりない。
 大企業で電子化が先行していたのは、電子化には一定のシステム投資が必要となるためだ。長期的にみるとメリットがあるので大企業はこれに投資をしてきたが、中小企業は目先のメリットが必要になるので投資をためらっていた。
 しかし、生産性向上のために中小企業でも業務の効率化を図らなければならないという風潮が生まれ、ベンダー各社も中小企業向けにより安価な製品を開発するようになり、これが市場に出回るようになってきている。例えば、経費精算についてもそうだし、いわゆる会計ソフトと呼ばれる中小企業が使うようなソフトウエアにもスキャナ保存制度に対応する製品が出回るようになり、中小企業が導入しても十分にコストメリットを感じられるようになってきている。


 ――中小企業が制度を導入したいと考えた場合、何から着手をすればよいか。

 従業員数が少ない小規模事業者では会計業務は後回しになりがちだが、会計業務を効率化したいというニーズはあるはずだ。そうした会社が制度を導入する場合は入力業務の効率化が図れる書類に限ってスキャナ保存の承認を申請すればよいのではないか。一方、数百人規模の会社の場合は、請求書を毎月数百枚処理しなければならないとすると、これらをまとめてスキャニングして支払業務を効率化すれば、経理の人員を営業に回すことなどもできる。どの書類を対象とすれば、どんなメリットが感じられるかを検討し、一番メリットの感じられる書類から電子化していくというのが最初の段階だろう。
 次の段階は、それら以外の書類を電子化するときにどういうシステムを導入するのかということになる。会計ソフトなのか、文書管理システムなのか、経理精算ワークフローなのかどういうシステムを導入するのかを検討し、導入を検討している製品が電子帳簿保存法のスキャナ保存の法的な対応をしっかりとできているか確認してほしい。これは税務当局が一番気にしているところだ。法的対応ができているシステムを導入し、正しく入力を行い、法定保存期間は保存することを守ることが重要になる。


 ――制度を導入すると税務調査で不利に働くと考える向きもある。

 税務調査のときにデータを調べるより紙を調べる方が非効率なので、調査で問題点が抽出されにくいと考えている企業も多いと思う。しかし、実際には調査というのは、手間がかかるからやらないということはなく、手間がかかるのであれば時間をかけてやるだけだ。
 電子化を通じて帳簿の会計情報の透明化が図られれば、結果的に適正な税務申告にもつながる。そうした面では電子化をどんどん進めてもらって、透明性を高めてもらい税務コンプライアンスを高めていってほしいと思っている。


 そでやま・きくぞう 東京都内の税務署・国税局調査部、国税庁等での勤務後、27年4月に退職し、税理士登録。SKJ総合税理士事務所所長。共著の「中小企業のための国税書類のスキャナ保存入門」(大蔵財務協会刊)など著書多数。

平成29年11月6日号

平成29年11月6日号