「税」についてはほとんど知識がなく、どちらかといえば、これまでマイナスなイメージしか持っていなかった私にとって、この夏その考えを一変させる出来事がありました。それは、今年の旧盆の送り日に祖母の待つ伊良部島へ渡った時のことです。

 父母とともにたくさんのお供え物を車に乗せ、伊良部大橋に差し掛かった時、母がしみじみと「橋が架かって本当に良かったね。」と話し始めました。私は単に荷物を持って船に乗り降りする手間が省けたことを母が喜んでいるのだと思っていましたが、そればかりではありませんでした。

 伊良部大橋は昨年一月に開通した宮古島と伊良部島を結ぶ全長三五四〇mの橋で、無料で渡れる日本最長の橋としても知られ、宮古の観光名所のひとつにもなっています。橋が開通した今でこそ、時間を気にすることになりましたが、それまでは船が唯一の交通手段でした。そのため、病気や事故といった緊急の際も船での搬送に時間がかかって命を落したり、台風などでしけが続くと船を出すことができず、食料にも事欠くなど不便な思いを強いられたりしたそうです。私の父母も苦い思いをした一人で、祖父が脳梗塞で倒れた際やはり、搬送に時間がかかって意識が戻ることなく亡くなってしまったこと、母方の祖母が亡くなった時、辛く悲しい思いで亡骸と一緒に暗い夜の海を小さな船で島に帰ったことなど、離島ゆえの苦しい体験を話してくれました。私が幼稚園に通う前のことで、ほとんど記憶になかったことだったので、話を聞き改めて離島の厳しさを考えさせられました。同時に、自由に行き来できるようになったことを心から喜ぶ両親の気持ちが痛いほど理解できた時間でした。

 大橋の建設は宮古島・伊良部島の住民の悲願であり、構想から何十年もの長い年月と莫大な費用を費やしてようやく実現したと聞いています。そして、その建設費用が国民の納める税金であることを知り驚きました。宮古島には伊良部大橋のほかにも、池間大橋や来間大橋など離島を結ぶ橋が建設され、住民の大切な生活を支えています。橋だけではありません。道路や学校などの公共施設、台風などの災害補償もまた、私たちの税金で成り立っているそうです。つまり、私たちはお互いの暮らしを豊かに支え合うために税金を納めているのだということになります。そう考えると、これまで買い物に消費税がかかるのはいやだなとか、自動車にまで税金がかかるのは大変だなと思っていた自分自身が少し恥ずかしくなりました。

 旧盆の行事を済ませた帰り道、伊良部大橋を渡りながら私は決意しました。「将来、社会人になった時、しっかり税を納められる人になろう。誰かの幸せを支えられる一人になろう」と。

平成28年12月19日号

平成28年12月19日号