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過去の連載「海外勤務者・在留外国人の税務」税理士・松田修

第9回/海外出向者の留守宅手当、給与格差負担金

2014年06月09日 税のしるべ 無料公開コンテンツ

Q1
 海外出向者に対する「留守宅手当」の取扱い

 従業員Fは、当社の東南アジアの海外子会社に3年間の予定で出向するため日本を出国しました。
 従業員Fには配偶者と学生の子供が2人いますが、子供の学校の関係から単身で赴任する予定です。
 従業員Fの給料は東南アジアの子会社が負担しますが、日本に残る家族の生活費に充てるため従業員Fには「留守宅手当」を支給する予定です。
 「留守宅手当」は、従業員F名義の日本の銀行預金口座に日本の親会社から送金する予定ですが、この「留守宅手当」は税務上どのように取り扱われますか。


A1
 御社の従業員Fは、3年の予定で海外子会社に出向するとの事ですので出国の日の翌日から日本の「非居住者」になります。
 そして、「非居住者」に該当しますと日本での勤務に基因して支払われた給与など「国内源泉所得」には日本の所得税が課税されますが、海外での勤務に基因して支払われた給与など「国外源泉所得」は日本では課税されません。
 ところで御社が支給する「留守宅手当」は日本で支払われますが、従業員Fが海外子会社に出向していますので、海外での勤務に基因して支払われたものに該当し「国外源泉所得」になります。
 そして従業員Fは日本の「非居住者」ですので、御社が支払う「留守宅手当」は「国外源泉所得」として日本の所得税は課税されず非課税になります。


Q2
 海外出向者に対する「給与格差負担金」の取扱い

 従業員Gは、当社の東南アジアの海外子会社に3年間の予定で出向するため日本を出国しました。従業員Gは配偶者とともに現地に赴任します。
 従業員Gの給料は東南アジアの子会社が負担しますが、現地の物価を考慮し現地で採用した従業員の給与は日本よりかなり低めに設定しています。
 日本の親会社から出向した従業員Gに対しても現地の給与規定が適用されますが、その金額は現在の日本の給与に比べかなり低い金額となるため、その差額を「給与格差負担金」として本人に支給する予定です。
 この「給与格差負担金」は、従業員G名義の日本の銀行預金口座に日本の親会社から送金する予定ですが、この「給与格差負担金」は税務上どのように取り扱われますか。


A2
 御社の従業員Gは、3年の予定で海外子会社に出向するとの事ですので出国の日の翌日から日本の「非居住者」になります。
 そして、「非居住者」に該当しますと日本での勤務に基因して支払われた給与など「国内源泉所得」には日本の所得税が課税されますが、海外での勤務に基因して支払われた給与など「国外源泉所得」は日本では課税されません。
 ところで、海外出向した者に日本と同じ水準の給与を支払うと現地で採用した従業員の給与との差が明らかになり、現地の従業員の士気が下がったり、賃上げの要求からストなどに発展することがあります。
 また国によっては治安が悪く多額の現預金を持っていると誘拐などの危険もあります。このようなことを防止するため、日本から出向する従業員には現地の給与規定を適用し日本の給与に比較して低額の給与を支払うことがあります。
 しかし、海外に出向して給料が下がりますと誰も希望する人がいなくなりますので、それを防止するために日本の親会社が「給与格差負担金」を支払う場合があります。
 このような「給与格差負担金」は日本で支払われますが、従業員は海外子会社に出向していますので、海外での勤務に基因して支払われたものに該当し「国外源泉所得」になります。
 今回のケースでも、従業員Gは日本の「非居住者」ですので、御社が支払う「給与格差負担金」は「国外源泉所得」として日本の所得税は課税されず非課税になります。
(日本の親会社から支給を受けた「留守宅手当」「給与格差負担金」は現地で課税対象となることが考えられますので必ず現地の専門家などにご相談下さい)


【海外出向者に対する「留守宅手当」「給与格差負担金」と寄附金の関係】

 法人税基本通達9―2―47(出向者に対する給与の較差補償)では「出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補填するため出向者に対して支給した給与の額(給与格差負担金)、及び、出向先法人が海外にあるため出向先法人が支給する「留守宅手当」の額は出向元法人の損金の額に算入する」と規定しています。
 したがいまして、海外出向者に支給する「留守宅手当」や「給与格差負担金」が寄附金と認定されることはありません。

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